こんにちは!現役声優のれおです。
前回はアニメの仕事について、キャスティングから準備、実際の収録での注意点について説明しました。
今日は外画の吹替(声の現場では洋画のことを外画と言います)についてお話しいたいと思います。
では始めます!
吹替の仕事が決まるまで
キャスティング
アニメの場合は、オーディションがあるということを説明しましたが、外画の場合、キャスティング権がかなりのウェイトで音響監督(音と声の監督)に一任されていることが多いと思います。
一部を除きます。
具体的には、いわゆるテレビなどで活躍されている俳優さんを起用する場合や、ディズニーなどの監修が厳しもの(それでも候補出しには音響監督が関わっていると思います。)です。
ただ、通常の吹替だと、この役にはこの人の声が合うんじゃないかと、音響監督が候補を出します。
ボイスサンプルから選ばれることも
思い当たらない時、もしくは予算面やスケジュールの都合などで候補者が決まらない時には、各事務所に問い合わせをして(例えば、老け役が出来そうな人がいないかなど)、所属声優のボイスサンプルを聴いてそこから選ばれることが多いです。
事務所によって得意分野が違う場合もある
声優さんによって、アニメの仕事が多い人、外画の吹替が多い人といます(もちろんバランスよく仕事している人もいらっしゃいます)
もしあなたが、事務所を探している、もしくは養成所を探しているならば、その事務所に所属されている声優さんがどちらの仕事をメインでやっているのか、プロフィールの過去作品をチェックしてみることをオススメします。
事務所の特色として、アニメに強い事務所、外画に強い事務所というのも見えてくるでしょう。
吹替の収録の準備
アニメと同じく台本とチェック用の映像を渡されて、準備を始めます。
ただし、アニメとは違う面がたくさんあります。
順番に見ていきます。
台本の違い
まずは台本。
外画の台本には、外画特有の記号が沢山記入されています。
それをしっかり理解して、チェックしないと、ちゃんとした収録をするのは難しいでしょう。
どんなものがあるか、いくつか代表的なものを紹介します。
台詞が[]で囲まれている。
[なあ、あとどれぐらいで着くんだ]
↑このように囲われている場合は、その台詞を言っている人は画面に映っていないということを表しています。
カメラからフレームアウトしている状態ですね。
そういう場合は、台詞の音を頼りに、しっかりと確認して下さい。
動きが一切見えないので、タイミングを間違えないように、映像の上に出ているタイム(タイムコードといいます)を台本の該当箇所にメモしておくのも一つの手です。
台詞の頭に(B)と書いてある
これは、画面に対して背中(Back)を向けているという意味です。
この場合も口の動きが見えないので、音をしっかりと確認する必要があります。
台詞の言い始めは、正面を向いていて、途中でカメラが切り替わって、背中側からのショットになることもありますよね。
この時も、台詞の途中から(B)と記載されますので要チェックです。
(息)
台詞の前後や、途中に(息)と書かれていたら、元の俳優さんのブレスが入っている箇所を表します。
そこも、音として表現する必要があるのですが、ただブレスを入れるだけではなく、吸っているのか、吐いているのか、ため息なのか、笑い息なのか、しっかりと感情を読み取って表現しましょう。
まだ他にも記号がたくさんありますが、もし分からなかったら素直に聞いたほうがいいです。
そのままにして収録に臨みそこで上手くいかなくて時間を使ってしまうほうが大変です。
外画の収録は1日がかりです。
2時間ほどの映画を1日で収録するので時間との戦いでもあります。
出来るだけ疑問は解消して現場に行きましょう。
映像のチェックを万全に
これはアニメでもそうですが、映像のチェックは丁寧に行って下さい。
外画は音を合わせる映像がもう完成されています。
ですので、口の動きなどはかなりシビアにチェックされます。
アニメだとまだラフ絵なので後から多少の修正はできますが、外画ではそれが出来ません。
外画の吹替台本は、言語が違いますが、言い終わりの口の形が出来るだけ元の映像に似るように、日本語を工夫してあります。
なので、しっかりと台詞の音の長さを合わせられるように準備する必要がありあます。
収録現場では、ヘッドホンから流れる原音を片耳で聴きながら、台詞を言って収録していきます。
そうすると、原音が聞こえ出しでから喋り始めるので、0.何秒喋り出しが遅れます。
なので、言い終わりがぴったりではなく、少しだけこぼれるようにしておかないと、ミキサーさんがタイミングを合わせた時に、逆に吹き込んだ台詞が足りず、元の映像の口の動きが余ってしまいます。
「パクってる」と言われたらそれです。気をつけましょう。
収録現場で気をつけること
マイクワーク
大抵の場合、30分のアニメより2時間の外画の方が、登場人物が多いです。
しかし、アニメの現場と同じくマイクは4つしかありません。
数十秒の間に何十人も役が登場するシーンなどもよくあります。
どのマイクが空いているのか瞬時に確認し入り、次にマイクに入る人が入れるように喋っていない時はすぐにどかなければいけません。
もちろん、物理的に不可能な場合は別録りで対処しますが、テストの段階では話し合いなしで始まります。
なので的確なマイクワークが要求されます。
そのためにも、現場に入ったら、まず全員としっかり挨拶をして名前を確かめましょう。
どの人がどの役をやるのか把握出来ていないと、マイクのどこが空いているのか、どこで空けるべきなのか判断するのは難しいです。
先ほども書きましたが1日で2時間の映画を収録するわけですから、チームワークも大切です。
その為にも挨拶はしっかりしていて損はないです。
挨拶大事です。
しっかりと会話しよう
事前の準備でしっかりとタイムを確認してメモして練習してきてもその通りにいかないこともあります。
原音のスタートを待って話すので若干遅れるからです。
そんな時、正確なタイムをチェックしてきたからといって、前の人の台詞を無視して喋り出してはいけません。
台詞が被ってしまうと、編集で調整することが出来ないからです。
それに、吹替であっても、お芝居には変わりありません。
しっかりと相手と会話してシーンをつくることで、ただの「吹替」ではなく、「日本語版」をつくることを心がけましょう。
外画特有の注意点
作品によりますが、2次元のアニメと違い、元々生身の俳優さんの演技に台詞を当てるので、あまり抑揚をつけすぎるとそぐわないことがあります。
音響監督と話し合って決めることですが、アニメよりもナチュラルなお芝居を求められることが多いということを覚えておいて下さい。
まとめ
今回は外画の吹替についてご紹介しました。
準備、収録と時間も技術も体力も必要な仕事ですが、世界各国の名作に声で参加出来る。
そして、色々な人物を見た目に関係なく演じることが出来る。
これは声優の醍醐味だと思います。
いつか皆さんとも、現場でお会いできますように!
その時は、覆面さん!れおさん!って声かけて下さいね!(仮名なのにどうやって……?)
さいごまで読んで頂きありがとうございました!
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